なぜ米国のトラックだけロングノーズなの?
2025-10-27
なぜ米国のトラックだけロングノ...

日本やヨーロッパで一般的に使われる輸送用トラックは、キャブオーバー(顔がフラット)の形状が多く見られます。これに比べ、米国のトラックは前方にエンジンを搭載した長いボンネット型のデザインが主流です。今日はその違いと背景について少しお話しします。
 
このデザインの違いには、単なる見た目の好みだけでなく、「道路事情」「法律」「運転距離」「整備性」「運転者の快適性」など、各地域の物流環境に深く根ざした理由があります。たとえば、狭い路地や都市部での小回りが求められる日本やヨーロッパでは、全長を短く抑えられるキャブオーバー型が効率的に機能します。一方で、広大な国土を縦断する長距離輸送が多いアメリカでは、エンジンを前方に搭載したボンネット型が冷却性能や乗り心地の面で優れ、長距離ドライバーの支持を集めています。
 
次章では、各地域を代表する実在ブランドの車両「アメリカ:Peterbilt」「ヨーロッパ:Volvo」「日本:Isuzu」を例に、それぞれの特徴がどのように形状に反映されているのかをご紹介します。
 
🇺🇸 アメリカ代表:Peterbilt(ピータービルト)
アメリカでは、PeterbiltやKenworthなどのロングノーズ型(コンベンショナル型)トラックが象徴的な存在です。特にPeterbilt 389のようなモデルは大きなボンネットと直線的なデザインが特徴で、高出力なディーゼルエンジンと大型ラジエーターを搭載できる構造になっています。また、ドライバーはエンジンより後ろに座るため、乗り心地が良く、長距離を走る「トラックドライバーの家」として高い快適性が求められます。広大な国土を横断するアメリカの物流環境に最適化された形と言えます。
 
🇪🇺 ヨーロッパ代表:Volvo(ボルボ)
ヨーロッパでは、Volvo、Scania、MANといったメーカーが主流です。これらのトラックは「キャブオーバー型(COE:Cab Over Engine)」が一般的で、Volvo FHシリーズのように運転席の下部にエンジンが収まる構造になっています。これは道路幅が比較的狭く、都市と都市を結ぶ配送経路が入り組んでいるヨーロッパにおいて、全長をコンパクトに保ちつつ車内空間を確保するための合理的な設計です。さらに、空力性能を重視した流線形のデザインも特徴です。
 
🇯🇵 日本代表:Isuzu(いすゞ)
日本では、Isuzu「Giga」やHino「Profia」、Mitsubishi Fuso「Super Great」などが代表的な大型トラックです。特徴はヨーロッパと同様にキャブオーバー型で、小回り性能が重視されています。日本の道路は都市部に限らず地方も狭く、配送先が工場の敷地内や商店街など限られたスペースであることが多いため、短い全長で操作性を高めた構造が求められます。また、運送業界の人手不足に対応するため、最近のモデルでは快適なキャビン空間やデジタル操作パネルなど、運転サポート性も重視されています。
 





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