のれん ― 江戸時代のマーケティングは、今も生きている
2026-01-31
のれん ― 江戸時代のマーケティングは、今も生きている...

のれん ― 江戸時代のマーケティングは、今も生きている
 
日本の街を歩いていると、今でも当たり前のように目に入るものがあります。のれんです。
飲食店、和菓子屋、酒屋、旅館。どこにでもあり、あまりに自然すぎて、多くの人は意識すらしていません。しかし、この「のれん」こそ、江戸時代に完成された極めて洗練されたマーケティング手法でした。
 
江戸時代、新聞もテレビもインターネットもありません。そんな時代において、店が自分たちの存在を伝え、信頼を獲得するための最前線が、のれんでした。店先に掲げられた一枚の布が、「ここに店がある」「今日は営業している」「この店は長く続いている」という情報を、言葉を使わずに伝えていたのです。
 
特に重要なのが「のれん分け」という文化です。これは単なる暖簾のコピーではありません。長年培った信用と評判を分け与える行為であり、ブランドそのものを継承する仕組みでした。いい加減な仕事をすれば、「あの店ののれんが汚れる」。つまり、品質管理とブランド維持が、自然と機能していたわけです。
 
面白いのは、この仕組みが今でも日本で生き続けていることです。デジタル全盛の時代になっても、初めて入る店で人は無意識にのれんを見ます。きれいに手入れされているか、文字は凛としているか、長く使われていそうか。そこから「この店は大丈夫そうだ」という判断を一瞬で下しているのです。
 
私はここに、日本の商売の本質を見る気がします。
大声で売り込まない。説明しすぎない。ただ、積み重ねた信頼を静かに見せる。のれんは、その象徴です。
 
江戸時代のマーケティングは、決して古くなっていません。
むしろ、情報過多の今だからこそ、学ぶべきものが詰まっているのではないでしょうか。
 
 





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