ベラミー式敬礼 ― 忘れられたアメリカの歴史
2026-03-26
ベラミー式敬礼 ― 忘れられたアメリカの歴史...

ベラミー式敬礼 ― 忘れられたアメリカの歴史

かつてアメリカでは、子供たちが教室で国旗に向かい、右腕を前方にまっすぐ伸ばして敬礼していました。今この動作を見ると、多くの人はナチス・ドイツを思い浮かべるでしょう。しかしこの「ベラミー式敬礼」は、もともとアメリカで生まれたものであり、ナチスよりも先に存在していました。
 
この敬礼は1892年、「忠誠の誓い(Pledge of Allegiance)」とともに導入されました。当時は純粋に国旗への敬意を表すための動作であり、政治的な意味や問題は一切ありませんでした。学校や公的な場で広く使われ、長年にわたりアメリカ社会に根付いていました。
 
しかし、歴史がその意味を変えてしまいます。
 
1930年代、ナチス・ドイツとアドルフ・ヒトラーがほぼ同じ形の敬礼を採用しました。これにより、それまで無垢だったアメリカの敬礼は、危険な思想と見分けがつかないものになってしまったのです。同じ動作が、場所によって全く異なる意味を持つようになりました。
 
これは大きな問題でした。
 
第二次世界大戦中の1942年、アメリカはこの敬礼を正式に廃止し、現在も使われている「右手を胸に当てる」方法に変更しました。これは愛国心を否定するためではなく、誤解されない形で守るための決断でした。
 
この話には重要な教訓があります。
 
シンボルは、それ単体で意味を持つのではありません。時代や状況によって、その意味は変わります。ベラミー式敬礼が消えたのは、それが間違っていたからではなく、別の意味に上書きされてしまったからです。
 
歴史とはそういうものです。意図だけでは足りません。どう見られるかが重要なのです。
 
ベラミー式敬礼は、どんなに善意で作られたものであっても、時代の流れによって意味が変わってしまうという現実を教えてくれます。
 
 
 





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